企画展開催スケジュール
2017年4月15日[土]-26日[水]中西夏之 展
2017-03-01
中西夏之 展 NATSUYUKI NAKANISHI
-生命の維持体としての〈白〉-
4月15日[土]-26日[水]
生命の維持体としての〈白〉
中西夏之は昨年10月23日、81歳の生涯を終えた。生存中、最後となった当画廊での「中西夏之展―思考の見えざる矢」(9月23日から10月8日)が終わった僅か2週間後のことで、その急訃の衝撃が今なお消え去ることなく、彗星の尾のように胸を揺るがし続けている。前回は1980年前後の代表作・弓形シリーズなどを中心とした作品が呼び戻された展示だったが、今回はそれに引き続いて1987年から91年の作品《白いクサビ・日射しの中で》あるいは《中央の速い白》シリーズの作品が中心となり、それに加えて連作の隙間を埋めるように制作をされた小ぶりながらそれぞれが大作を下支えする絵画作品が展示される。
とくに中心になるシリーズ作品には、いずれも〈白〉を意識の主体に浮上させたタイトルが付けられている。《白いクサビ》とは画面への白の介入を意識し、《速い白》とは絵画空間に時間的要素を汲み入れた概念を想像させる。中西の絵画作品に出現した紫や黄緑の色彩が画面に脈動を与えることになったのは前回の展示でも明らかなのだが、生命の維持体には必ず微妙な調整役を必要とする。中西はその役割を〈白〉に見出したのではないだろうか。
今回の展示作品も中西の絵画表現がたどりついた重要な道程の断面として重要な作品ばかりである。美術家・中西夏之の逝去を悼みつつ、その多様な遺業をふり返る機縁となることだろう。
とくに中心になるシリーズ作品には、いずれも〈白〉を意識の主体に浮上させたタイトルが付けられている。《白いクサビ》とは画面への白の介入を意識し、《速い白》とは絵画空間に時間的要素を汲み入れた概念を想像させる。中西の絵画作品に出現した紫や黄緑の色彩が画面に脈動を与えることになったのは前回の展示でも明らかなのだが、生命の維持体には必ず微妙な調整役を必要とする。中西はその役割を〈白〉に見出したのではないだろうか。
今回の展示作品も中西の絵画表現がたどりついた重要な道程の断面として重要な作品ばかりである。美術家・中西夏之の逝去を悼みつつ、その多様な遺業をふり返る機縁となることだろう。
馬場駿吉(名古屋ボストン美術館館長)
略歴
1935年東京生まれ。初期の前衛的活動の後、60年代後半からは絵画制作が仕事の中心に据えられている。その作品は、様々な主題や要素への取り組みが連鎖、関連し、複雑に影響し合って成り立つという非常に独創的なものであり、常に日本を代表する作家として存在感を示してきた。近作「連れ舞」シリーズ。また、絵画を主体としつつも、インスタレーションやパフォーマンス、リヨン・オペラ座などの舞台装置を手がけるなど、その表現形態は幅広い。これまでに美術館での個展を数多く開催、主要な美術館に作品が収蔵されている。近年では2012年にニューヨーク近代美術館での「TOKYO1995 -1970:新しい前衛」展へ出品、2013年には国内で「ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡」展が開催されるなど、初期の活動も再注目されている。2016年、逝去