企画展開催スケジュール
2012年5月23日(木)-6月7日(木)松尾 藤代 展
2012-03-19
Living with Contemporary Art-No.12
松尾 藤代 展 FUJIYO MATSUO
-静謐な空間の響き-
5月23日(木)-6月7日(木)
松尾藤代の作品に寄せて
松尾藤代は1968年大阪市に生まれ、91年に大阪芸大美術学科を卒業し、その後、個展、グループ展で精力的な発表を繰り返している。その制作の出発点ではマーク・ロスコに強く影響され、90年以降は一貫して「窓=光」を描いている。
支持体はパネルだったり、キャンバスだったり、綿布だったりするが油絵具のマチエールはこれによく同化し、こなれている。支持体によってマチエールや色の乗りは微妙に違い、それぞれの作品の織りなす光や空間の表情は複雑に変化し、けっして単調さは感じさせない。黒い格子に遮断された向こう側の光の世界は不思議な表情を伴い見るものを幻惑する。
黒を中心に淡い中間調子の色使いの作品が多いが、近年ではオレンジ色や緑、淡い紫色などを使っており、色彩の明確さが増している。静的でありながら熱気を帯びた画面の光は、―何者かの存在―の予感であると同時に、色面のぶつかり合いから生まれる稜線の稠密な調子の変化は確かな精神の存在を感じさせ、静謐な空間の響きとして画面全体に拡がる。このような作品の前では、見る者は日常の通俗な時間を根元的な時=生の体験へと変容させる。
世俗の価値観に退行した現代の美術の中にあって、松尾の仕事は、不安と向き合う生の充溢の実感に根ざしており、全力で制作を進めるその姿は極めて求道的であり、作品から放たれる光の内容の成熟が楽しみである。
支持体はパネルだったり、キャンバスだったり、綿布だったりするが油絵具のマチエールはこれによく同化し、こなれている。支持体によってマチエールや色の乗りは微妙に違い、それぞれの作品の織りなす光や空間の表情は複雑に変化し、けっして単調さは感じさせない。黒い格子に遮断された向こう側の光の世界は不思議な表情を伴い見るものを幻惑する。
黒を中心に淡い中間調子の色使いの作品が多いが、近年ではオレンジ色や緑、淡い紫色などを使っており、色彩の明確さが増している。静的でありながら熱気を帯びた画面の光は、―何者かの存在―の予感であると同時に、色面のぶつかり合いから生まれる稜線の稠密な調子の変化は確かな精神の存在を感じさせ、静謐な空間の響きとして画面全体に拡がる。このような作品の前では、見る者は日常の通俗な時間を根元的な時=生の体験へと変容させる。
世俗の価値観に退行した現代の美術の中にあって、松尾の仕事は、不安と向き合う生の充溢の実感に根ざしており、全力で制作を進めるその姿は極めて求道的であり、作品から放たれる光の内容の成熟が楽しみである。
田口 貴久(立軌会同人、名古屋芸術大学教授)
略歴
1968/大阪市生 91/大阪芸術大学卒。 個展:95/大阪府立現代美術センター 97/CUBIC GALLERY(大阪) 02/村松画廊(東京) 07/仙台市博物館 08/ソフトマシーン美術館(香川県)10/名古屋画廊ほか。 グループ展:96/フィリップモリスアートアワード(スパイラルガーデン/東京) 97/ビエンナーレまくらざき<佳作賞>(鹿児島県)、吉原治良賞美術コンクール<優秀賞>(大阪府立現代美術センター)、Depth of Focus 絵画の焦点深度と浸透圧について(芦屋市立美術博物館/兵庫県)、光の方へ・・・(京都市美術館) 98/VOCA '98(上野の森美術館/東京)、シェル現代美術賞展(目黒区美術館) 99/現代日本絵画の展望展(東京ステーションギャラリー) 00/水晶の塔をさがして(福岡市美術館)、光の記憶 Memory/Space(ヨコハマポートサイドギャラリー/神奈川県) 02/いま、話そう-日韓現代美術展(国立国際美術館/大阪、韓国国立現代美術館/ソウル) 05/光りの絵画展(名古屋画廊)ほか。 2011~ケルン(ドイツ)在住。所蔵:国立国際美術館、千葉市美術館、福岡市美術館ほか。